手術内容詳細を聞いてさらにコトの重大さに愕然とした
今思い返すと、もっと具体的な事前説明を受けておく必要があったし、
主治医にもその義務がったのではと思う。
手術室から戻った夫の姿に大きな衝撃を受けたからだ。
ずっとずっと泣かずにいたのに、その夫の痛々しい姿に涙が止まらなかった。
結論:下咽頭癌は一切取れなかった
事前の説明で、手術時間は10時間から12時間。
まず、
- 咽頭全てを取り除き、転移のあるリンパ節の清々術
- 甲状腺にも浸潤していた場合は、甲状腺の一部切除
- 食道への浸潤も濃厚なので、食道の一部を切除し、小腸の一部を食道に移植
それぞれの手術担当医から説明、主にリスクに関しての受容に次ぎ次サインした。
主治医が、咽頭そばにあるリンパ節の清々術については、
大きな血管と絡んでる可能性があるので、取れないもしくは、取る際に
命に関わるリスクがあり保障できないと言われたので、
『MRIはとらないのですか?』
と質問した。
海外ドラマの中でも医療ドラマが好きだったので、浅い知識があり、
頸動脈と転移しているリンパ節がどのような位置関係や状態にあるのか、
造影CTとMRIを組み合わせてみれば、事前に切除可能か、不可能かはある程度
予測がつくのではと思ったからだ。
『MRIは取りませんね』
主治医は私の顔も見ずに答えた。
あの時『なぜですか?』とさらに聞かなかった自分を今でも後悔している。
長ければ12時間、しかも小腸の切除もするというのに
手術日当日、夫の病室に行くと、下剤もしていないし、
今朝はどの先生も来てないという。
『え?そんなことある?』
以前、娘が簡単な手術を受けたことがあり、その際は、
手術する主治医の他数名の医師が『調子はどう?がんばろうね!』など
様子をみに来て声をかけてくれたので少し驚きました。
緊急手術ではなので、小腸の切除・移植の予定があるのに、
腸が汚いままでいいのかな…など素人ながらに疑問が頭を駆け巡りましたが、
一番不安なはずの夫に心配をかけたくなくて追及はしませんでした。
ほどなく、看護師の方が迎えに来て
手術室まで歩いて同行し、入り口で娘とハグをして送りだしました。
10時間を超えることを予定し、私以外に娘、母、友人が代わる代わる病院を
訪れ、緊急時に備えてくれる準備をしていました。
手術開始から4時間
看護師さんが、待合室にいた私を訪ねてきて『すみません、手術室に至急いらして下さい』と告げました。
『何かあったんですか?!』心臓が口から飛び出そうになり叫ぶと
『だいじょうぶですよ』と看護師さんの返答。
ダイジョブなわけがない
全身が震えていた。
手術室の中の少し手前になある古めかしいとても小さな部屋に通され、
待っていると主治医と看護師が来て
『何とか、切除が出来ないか検討しましたが、やはり、左側のリンパ節が太い血管と絡みついていて切除できませんでした。このまま無理に手術を進めると命に関わる事態も想定できますし、リンパ節の切除が出来ない状態なので、咽頭を切除して声を失ってしまうより、残した方が良いのではとの見解になりました』
『私たちに選択の余地はないですよね…、』
諦めの境地で小さくつぶやいた私に
『選択の余地はあるんです。抗がん剤と放射線治療に切り替えましょう』
その時私が見ていたのは、手術室で手術をしていたはずのその主治医の
いつもの通り整髪料で整えられた髪と首に下げられたネックレスだった。
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