抗がん剤の影響で難聴になってしまった耳に水が溜まるようになり
聞こえがますます悪くなってきたので、
鼓膜を切開しチューブを入れ廃液する手術を数度受けたが、
それ以外は体調も良く、経口で食事がどんどん摂れるようになっていた。
アーユルヴェーダ治療としては、良くない事だが、
外食する時などは、夫が食べたいものにストップはかけていなかったので、
和食の『定食』を一人前食べれるようになっていた。
7月にはとんかつが食べたいと言い出し、『スペシャル定食』をペロリと
平らげるほどになっていた
明らかに喉の腫瘍が小さくなっている証拠だと嬉しかった
良く散歩にも出かけ、買い物も一緒に行き、岩盤浴や温泉に出かけた。
耳の聞こえが悪い以外は、平穏な日常が味わえていた。
そして、放射線治療終了からちょうど3か月目、
治療の効果を確認するために久しぶりに造影CT検査を受けた。
治療開始前の説明を受けた際に、『なぜ3か月って決まってるんですか?』と
看護師に聞いた覚えがある。
治療で沢山放射線を浴びるのでそういう決まりなんです!との回答。
その時点でも『?』と一瞬理解が出来なかった。
後で調べたところ、
抗がん剤・放射線の治療が効果的であったと結論付けカウント出来る規定日数の問題だったと知った。
つまり、その時点で、治療した場所の腫瘍が消えていれば、【効果があった】と認定されるらしい。
検査を受けるのは本望ではなかったが(また放射線を浴びるので)、喉の癌がどのような状態になっているのかを知るには検査を受けるしかない。
検査を受けた帰り道、駅のそばの小さな和定食屋さんでランチを食べた。
シシャモの南蛮漬け、切り干し大根、ほうれん草の胡麻和え、おしんこ、なめこのお味噌汁、雑穀米…そんなメニューだった。
夫も完食。
買い物をして家に帰り、夕食の時間。
いつものように手作りした胃婁食を入れた後、
口からも少しでいいから食べたい夫に食べなれたサラダを出したが、
喉が腫れて全く食べられない。
たぶん夫も事態がつかめず、無理やり飲み込もうとしてむせ返り、苦しむことに。
『え? 急にどうしたんだろうね。今日はやめておこうよ。』
まだ点と点が結びついてなかった私たちは、明日はまた元に戻ると心配もしていなかった。
今思い返すと、あの日から今日現在まで、夫がまともに食事が出来たのは、
あの地味で静かなお店の『和定食』が最後だった。
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